アーシューラー(正則語
‘āshūrā’、モロッコ方言
‘ashūṛa)
はイスラーム暦(ヒジュラ暦)第1月ムハッラム月の10日、ムスリムの義務としての喜捨「ザカート」を行う日で、「ザカートの日(nhāṛ
z-zkā)」とも呼ばれます。
1年間所有していたお金の2.5%、農産物や家畜は一定の割合で、困窮者に喜捨しなければなりません。しかし、ザカートをしたかどうかは口外しないので、すべての人がイスラーム法で定められた通りに行っているかどうかは不明です。
ザカートは困窮者(masākin:金がない人、fuqaṛā:十分な金がない人)に与えられますが、優先されるのは、(1)親、(2)兄弟、(3)近くに住む親戚や隣人です。困窮者はアーシューラーの1週間位前から、商店や住宅地をまわってザカートをもらいます。
アーシューラーはまた、「ザムザムの日」とも呼ばれ、水を掛け合う習慣があります。家族や友人間だけでなく、見知らぬ通りすがりの人まで標的となります。
ザムザムというのは、メッカのカアバ神殿がある聖モスク内の泉の名前で、その水は霊験あらたかな聖水とされます。
敬虔なムスリムはこの日、自発的な断食を行ないます。
夕食はクスクス。犠牲祭のときに屠った羊の肉の一部を干して保存しておき、この日にクスクスを作ります(一部の家庭)。
アーシューラーは祝祭日(‘īd)ではないので休みにはなりませんが、子ども達にとってはとても嬉しい日です。小さな太鼓や、鉄砲や車等のおもちゃを買ってもらえるからです。一般に、親が子供におもちゃを買ってあげるのは、このときだけだそうです。
ムハッラム月(女性はアシューラと呼びます)の1~10日、およびラマダーン月の27日以降は、呪術(siḥr)の効力が3ヶ月続くといわれ、呪術が非常に盛んになります。赤ちゃんは呪術の影響を受けやすいので、まだ歯の生えない乳児のいる母親はこの時期、子連れで外出しません。 |