アラビア語の法則

 

 

 

ご恩は忘れません

 

モロッコ

フェス東方百キロ程のところにあるタザという町で自動車修理工場を営んでいる人から聞いた話です。

カサブランカの旧市街の中を車で走っていたとき、知らない場所なので細心の注意を払って運転していたにもかかわらず、突然、子どもが飛び出してきて、ひいてしまいました。すると、ただちに人垣に囲まれ、子どもの親が呼びにやられました。一人の知り合いもない場所で父親からどんな目に遭わされるかわからず 真っ青になって立ち尽くしていると、慌てて駆けつけてきた子どもの父親は、彼の顔を見た途端、表情を一変させて笑顔になり、「おお兄弟よ」と言いながら彼を強く抱きしめ、「私の子はあなたの子だ」と言うのです。

父親の態度に一同唖然として、理由を尋ねました。父親の説明を聞いて、彼はやっと思い出しました。

以前、旅行中の家族が乗る車がタザで故障し、彼の工場に修理が依頼されました。旅行中にお金をほとんど使い果たし、あとは一路カサブランカに戻るだけ、というところで車が故障。部品交換が必要で、その部品の値段だけでも所持金の額をはるかに上回るため、どの工場からも修理を断られた後、彼ならやってくれるかもしれないと聞いて、この人のところに来たのです。彼は事情を知り、無料で修理してあげました。それがこの父親だったのです

この話を聞いた後、同席者から自分の体験談が次々と飛び出し、盛り上がりました。