アラビア語の法則

  

 

 

ジェスチャー:舌打ち

 

シリア

チッという舌打ちは、否定の返事「いいえ(ラ la’)」を示します。単なる否定で、日本のように苛立ちや侮蔑の感情は含まれません。

チッチッチッと舌打ちを繰り返すのは、他人の苦痛や災難に同情して心を痛めているときや、後悔しているときです。

 

☆ ☆ ☆

 

シリアの電車はバスより遥かに時間がかかるため、ダマスカス・アレッポ間の移動はいつもバスを利用していたのですが、一度位はと、アレッポから電車に乗ったときのお話。

ダマスカスに着いた電車は、駅の手前の何もないところで停車して動く気配がなく、乗客は訳もわからずに電車から地上に降りるはめになりました。

他の人達がおそるおそる慎重に降りるのを見て訝りながらも、大した高さではないと高を括っていた私は、思い切ってエイヤと飛び降りたのです。

しかし、レールは敷石で盛り上がったところにあり、想像以上の高さがありました。

着地に失敗し、石で手を傷めた私が痛みを必死にこらえていると、見ていた女性達が舌打ちするのが聞こえてきました。舌打ちが同情の表明であることを知らなかった私は、それによって心も深く傷ついたのでした。

無知は最悪の友。

al-jahlu sharru l-’aṣḥābi.

 

 

モロッコ

舌打ちは否定の返事「いいえ(ラ la)」ですが、これが使えるのは兄弟や親しい友人の間だけで、それ以外の人にするのはフシューマです。

犬を呼ぶときも、チッチッチッと舌打ちします。ちなみに、ネコを呼ぶときは「ペシュペシュ」です。