アラビア語の法則

 

 

 

スカーフ

 

シリア

ムスリマ(女性イスラーム教徒)には、スカーフ(’ishārb:仏語écharpe)を頭に被っている人と、そうでない人とがいます。

スカーフには2つの段階があります。

普通に被る。前髪は出ている。

スカーフをピンで留めて、髪も首も完全に隠れるようにする。

②の被り方をしたスカーフをヒジャーブ(ḥijāb)と言います。ヒジャーブをするときは、身体の線が出ない服装をします。洋服を着る都市部の女性はたいてい、丈の長いコートを着ています。夏の暑いときもです。

以下は私の友人の話。

ライヤーはスカーフをしていますが、彼女に言わせると、ムスリマにとって一番の難関はスカーフを被り始めること。礼拝や断食は人知れずできますが、スカーフは人の目に触れるので難しいというのです。彼女に聞くと、家族・親戚の中にスカーフをしている人はいないとのこと。ライヤーも大学一年まではスカーフをつけていませんでしたが、二年になって被り始めました。最初は前髪を出して、だんだん慣れていき、前髪も出さないようにしていったのだそうです。

ライヤーはブラウスにスカートといった普通の服装をしています。スカーフは独特の被り方でとても素敵だったので、それをほめると、「本当はこれもいけないのよ」と言って、はにかんでいました。

ライヤーにスカーフをする理由を尋ねると、「私はコーランを信じています。コーランにスカーフをつけるよう書かれているからそうするのです」と明快な答えが返ってきました。

大学の寮のルームメイト、イーマーンも「コーランに書かれているから、本当はスカーフをしないといけないのだけれど…」と言っていました。彼女はスカーフを被りません。しかし、毎日5回の礼拝を欠かさず、神の意に叶う行動をしようとする信仰心篤い人です。出身地はレバノン国境に近く開放的な土地柄 で、スカーフをしている人は少ないのだそうです。他の人と違うことをするのは非常に勇気がいるんですね。ただ、イーマーンの場合は、髪型や服装からアクセサリーにまで気を使うような、おしゃれな人だったことも、スカーフ着用に踏み切れない原因だったかも知れません。

この二人の話だけだと、シリアにはスカーフをしている人があまりいないように思われてしまうかも知れませんが、実際は非常に多いです。私が個人的に親しくなった女性は、上記のイーマーンを除き全員、スカーフをしていました。

 

 

モロッコ

スカーフをしている女性はあまり多くありません。特に若い女性は少なく、イスラーム主義の影響が強いと言われる大学でも、女子学生の1割ぐらいです。

以下は、とあるモロッコ人から聞いた話。(多少、偏見が入っているかも知れません)

「1960年代までは、女性全員がスカーフ(derra)をしていた。スカーフをするのは、宗教的な理由からではなく、しないのがフシューマだったから。家族以外の男性に髪を見られるのは、裸を見られるのと同様に思われていたのである。

70年代以降、女の子も学校に行くようになると、スカーフをしなくなった。スカーフは洋服に合わないし、勉強で忙しくて髪を切るようになったからである。学校に行く子どもに影響されて、母親もジェッラーバ(jellāba / jellāb / jellābīya:フードつき外衣)のフードをかぶらなくなり(スカーフはしていた)、その後、スカーフもしなくなった。

ヒジャーブ(ḥjāb)は新しい宗教的モード。ヒジャーブをしている女性は、何らかのイスラーム集団に属するか、イスラミストの父親もしくは兄弟にヒジャーブを強制されているか、ヒジャーブをしていれば結婚相手が見つかりやすいと考えている女性かである」